こわい物知らず、親知らず

私・夫・お嬢・坊や。4人家族の日々のこと。

ママの親知らず抜歯 第1章

私は、三回、親知らずの抜歯をしたことがある。

一回目は、独身時代に、右上。

二回目は、第二子の出産後、右下。

三回目は、前回からちょうど一年後、左の上下。


二・三回目が、子供がいる状況で、

色々勃発するわ、反省点が多いわ、てんてこ舞いだった。

その時の状況をブログに書いてご紹介する。

ダメな例としてご覧頂きたい。


まず、言いたい。

授乳期間中、急ぎでないなら、抜歯はしない方がよい!!


今から一年前の夏、

お嬢こと長女と一緒に、検診に行った歯医者で、久々にレントゲン撮影をした。


「お母さん、親知らず、横向きに生えちゃってるから、これ早めに抜いた方がいいよ~

特に右下ね。

隣の歯に影響出てる感じだからね~どうするー?

やるなら大きい病院、紹介するよー」

気さくな先生にサクサクっと言われる。


ほんとだ、歯茎の中の親知らず達、

寝転びながら、横の歯を頭突き状態。


10年程前に抜歯した、右上の親知らずは、

まっすぐ生えていたのだが、

残る三人衆、そっち方向に戦いを挑んでおったか。


お嬢が生まれてから、

「オラ、子供の歯を守る!移すまじムシ歯菌!!」

と私には熱い責任感が宿っていた。

歯医者に通っている期間は、更にその意識が高い。

前回の抜歯がそんなに大変だった記憶もなく、

また、育休中なので、顔が腫れても何とかやり過ごせると思った。


抜きます!潜む残党、引っこ抜いてやりましょう!!

私は、力強く即答。


「おー頑張れ~!」

サクサクっと先生が書いた、大病院への紹介状を手に入れた。


しかしこの時点で、自分が前回と違う状況に置かれていることに気づいていなかった。

抜歯直前、診察台の上で苦悩することになる。

 


一週間後、

紹介された病院の歯科口腔外科へ、鼻息荒く残党退治に向かった。


そこで、問診表を見て、優しげな先生が心配そうに私に問う。


「授乳中ですと、強い痛み止めの薬を出せないので、

抜歯後、ツライかもしれないですよ。

今回、抜歯しても大丈夫ですかね?」


え…?

そうなの…??

それ、早く言ってよ…???


そうなのである。

私には当時生後4ヶ月の、第二子の坊やがいる。

昼夜、彼のために稼働するおっぱいを携えていた。

検診に歯医者へ行く時は、坊やを預けていたので、

サクサク先生、私が授乳中とは知らなかったのである。

しかし、何より、私の無知が問題であった。

痛み止めを飲んだ経験がほとんどなかったのだ。


今痛い訳ではないから、慌てて抜歯する必要はない。

しかし、

車で30分かけて病院に来ている。

坊やも親に預けている。

かなり覚悟もしている。

康介さんを、手ぶらで帰らせる訳にいかねぇぞ。

残党退治が、かのロンドンオリンピック競泳になってきた。


右下の一本だけ、抜きます!

薬は弱くても大丈夫です!

頑張ります!!


もう引き下がれない。

診察台の背もたれが倒れて行く。


部分麻酔後、

ゴリゴリ、ガリガリされながら、

15分程で裁断された親知らずが抜けた。


麻酔が効いてるので、違和感はあるが、そこまで痛みはない。


ひとまずは一番悪さしそうな奴を抜いてやった!

手ぶらではない、袋に入った粉々の親知らずがお土産だ!

 


薬局で処方された薬は、

①一日三回、食後に飲む、痛み止め・抗生剤

②痛いときに飲む頓服薬


①は、授乳中でも飲める。

ただし、痛み止めの効果は弱いらしい。

②は、成分が母乳を通じて、子供に影響が出る可能性があるとのこと。飲む場合は、授乳はできない。

うちの坊やは

「オレ、これだけでいいんすよ」と言わんばかりに母乳しか受け付けないので、授乳は必須。

ムシ歯や口内の病気を移すまいと、抜歯しているのに、

もっと良くない物を手渡し、いや、乳渡ししてどうする。

これは飲むもんか!

母性が痛みに強く立ち向かわせていた。


食事は、柔らかく流動的な物を、ゆっくり反対側の歯で食べた。

授乳中なので、食べることには、並々ならぬ意欲がある。


あれ、何とかなるかも?と思っていたが、甘すぎた。

麻酔が切れてからが、本当の勝負だった。


夜は痛みパラダイス!

地獄とは言いたくない、抜きたくて抜いたのだもの!

陣痛を思えばなんのその!


ガンガンギンギン!押し寄せる痛み!

ウギャーフギャー!乳を求める坊や!

身体を横にすると、重力がアゴにかかって痛い。

添い乳もポジションが定まらない。

ウトウトすると、痛みが現れる。そこに坊やカットイン!


陣痛を…思えば…うっっ…

一度決めたら引き下がれない自分を、強がりな自分を、うらめしく思った。

この痛みで何か命が出てくるわけでもない。

なんで私は、痛み止めが飲めないタイミングで抜歯しちゃったんだ。


苦悶しながら、パラダイスを堪能し、朝を迎えた。

 


抜歯から二日目。

少し顔は腫れている。

満身創痍で、傷口確認のために、病院に行ったが、問題はないとのこと。

抜糸は六日後だ。

親や夫に、家事や子供の対応はお願いして、

安静にして過ごした。

無謀な娘・妻・母に、なんて優しさ。身に染みます。傷に染みます。


抜歯から三日目。

この日が腫れのMAXであった。

鏡の前に、右半分カバオ君※が現れた。

自分のメタモルフォーゼに、思わず爆笑。

したいが、口が開かないからニヒルにしか笑えない。

※カバオ君…アンパンマンの食いしん坊キャラ。


幸いにも治りは良く、

薬を飲んでいれば痛くはなかった。

真夏で猛烈に熱いが、マスクを装着し、お嬢の保育園迎えにも行けた。


その後、経過は良好で、

抜糸の日までには痛みも腫れもなくなっていた。

 


1ヶ月後、

最後の傷口チェックも難なくクリアした。


その時、先生が、優しく問う。

「残ってる左の二本は…しばらく時間あけましょうかね?」


はい!坊やがおっぱい卒業したらでいいです!!

何ヶ月後かわかんないけど、ガンガン薬飲めるようになった時に何卒!!

次回、初診料払うことになっても全然いいです!!


こうして、今回の抜歯は終わった。

 


抜歯は、乳飲み子を抱えた状態でするもんじゃないと、深く深く反省した。

痛い目にあわなきゃわからない、

怖いもの知らずの謎のチャレンジ精神、

どうにかしてほしい。


まだ二本の親知らずが、左の上下に残っていると思うと、顔半分が重い。

まだ抜いてないのに、すでにカバオ君に取り憑かれた気持ちだ。


できるだけ、坊やの卒乳をギリギリまで引っ張りつつ、

今回の反省を活かし、痛み止め薬が飲める状態で挑もうと心に誓った。

 


しかし、次回の抜歯は、

ベストタイミングを考えて臨んだのに、

予想を超える苦しみに見舞われることになる。

一年後の様子を書いた、第2章へ続く。