こわい物知らず、親知らず

私・夫・お嬢・坊や。4人家族の日々のこと。

ママの親知らず抜歯 第2章 抜歯十七日目〜一ヶ月後

抜歯から十七日目。

 

歯茎の穴のガーゼを詰め替えてもらい、

徐々に食事を普通に取れるようになってきて、喜びを感じていた。

 

抜歯以来、しばらく疎遠となっていた地元のパン屋へ向かった。

ここのナッツがザクザク入って、外パリ中フワのちょっとハードめなパンが大好きなのだ。

そろそろ、このパンも右の歯を駆使すればいけそうな気がする!

 

来店した際、待っていてくれたかのごとく、ちょうど焼きたて。

これはもう、車の中で待ちきれず食べてしまうパターンだ!憎いやつめ!

 

私は、無理くり、太めのバトン状のパンを食べまくった。

ああ、うまい。噛めば噛むほどうまい。

 

入れ歯の接着剤のCMで、

「噛める喜び!」といいようなことをよく聞くが、

いまなら、CMターゲットのシニアの気持ちがとてもよくわかる。

もう噛めないと出かける気にもならないのじゃよ。

 

その時、口の中に違和感。

ガーゼ、出てきてる…

しかも、だいぶ、ピロピロと長い…外れそう…

 

絶望感。ハードパンをモッシャモッシャと貪った自分に大後悔である。

一日で、もうダメにしてしまうなんて、

どうして私は、食の誘惑に弱いんだ!!バカバカバカ!

 

上顎やら、手前の奥歯やらに、ガーゼの端がまとわりついて、何も集中できない。

 

そして、抜歯十八日目。

ついに、朝の歯磨きの時に、スポンっとガーゼが完全に外れてしまい、

慌てて、病院に行くことになった。

もう、行きたくないよ、、、

 

タンタンメン先生に、

「すみません…度々…」と謝りつつ、診てもらう。

 

治ってきているから、歯茎が盛り上がってきていて、

ガーゼがもう入らなくなってきている、

と言う。

 

そうか、そうだったのか、

あまりに丁寧にガーゼを詰めてくれたから、

最初は褒めたけど、

ぎゅうぎゅうにし過ぎたせいで、ポーンと出ちゃったんじゃないかと、

心の隅であなたのせいにしていたよ。ごめんなさい。

 

そんなわけで、ガーゼは入れずに、様子を見ることになった。

 

ガーゼの支配からの卒業…!!

 

尾崎豊の卒業が、私の中を流れ始めた。

もう大人なので、感情高ぶって窓ガラスを割ったりはしない。

 

歯茎の穴が放置されることは、若干不安はあるが、

左側から憑き物が落ちた感覚である。最高だ!

 

ガーゼがなくなったと同時に、

頭痛、頬骨・耳の痛みは気にならなくなってきた。

異物に、左半顔も過剰反応していたのだろうか。

 

抜歯十九日目〜二十九日目

途端に全てにおいてやる気が出てきた。

 

この夏、放置していた本を読み始め、

ドレスアップして食事会に出かけ、

ベリーダンスのレッスンにも行った。

 

やりはじめることが、突然で、極端すぎる。

左歯茎も、ビビってるかもしれない。

 

痛み止めは、徐々に飲まなくても平気になった。

 

食後は、歯茎の周りが何となく詰まっている感があるが、

水を大量に口に含み、ゆっくり大きく、グジュグジュすると良い気がする。

やっている時の顔の収縮、人様には見せられない。

 

運動後は、傷が熱を持つのか、少し痛い気がする。

運動もパンも、まだまだハード系は要注意だ。

 

子供に口が動くようになったか、心配をされるので、

ほら!こんなに開くようになったよ!

と、張り切ってみせた。

 

しかし、しばらくストレッチをしていなかった身体のように、

長時間はなんだかつらい。

 

何でも徐々に徐々に。

 

そして、抜歯三十日目。

一ヶ月がたった。

もうすっかり通常運行だ。

歯磨きも、固いものを食べるのも、痛みはもうない。

親知らずを抜いたことさえ忘れ始める。

痛みや辛さは忘れるのが一番だ。

反省して学んだことは、忘れないようこのブログに記載した。

 

どうか、親知らずを抜く人に、

ダメな例として、お役に立てますように。

ママの親知らず抜歯 第2章 抜歯十二日目〜十六日目

抜歯十二日目。

ガーゼが私の歯茎に住みついた。

 

ガーゼが、どういう状況なのか、

勇気を出して、大きく口を開けて観察した。

 


左の下の、大きな歯の後ろに、穴があり、

ひょっこりガーゼの端っこが出ている。

 


はっきりとしない発言をすることを、

「奥歯に物が挟まったような言い方」

というが、

はっきりと言おう。

私は、奥歯に物が挟まっている。

更に正しくはっきり言えば、

歯茎にガーゼが詰まっている。

なんだろう、この矛盾。


飲食は、ガーゼがあっても、右の歯を使えば問題なく、

口が開くようになってきたので、色々な物が食べられるようになってきた。

 


しかし、詰まっている感とともに、

ひょっこりはんのガーゼ端がどうにも気になる。

 


うがいをするとピロピロする。

びっくり箱のバネのように、ビヨヨヨーンと出てきてたらどうしようと、不安になる。

 


食パンを食べた時は、もう困惑だった。

これは、ガーゼなのか、溶けかけた食パンなのか、

舌触りだけでは判別がつかない!

私はどっちを喉に送り込んでいいのかわからない!

 


この頃から、

左の頬骨、こめかみが痛み出した。

耳のあたりの痛みも続いている。

何か詰まっている感がストレスで、肩も凝ってきた。

痛みで夜もよく眠れない。

 


この日から、また夫が出張で不在だったので、

再び実家に身を寄せた。

 


抜歯十三日目、十四日目。

夜によく眠れないので、昼寝をする。

すると、夜眠れない。

まったく望まないのに、昼夜逆転になってしまった。

オールなんて、クラブで調子付いて踊ったりしてた頃以来じゃなかろうか。

 


高校時代からの友人に会う約束があり、とにかく気合いで向かった。

そして、彼女に詫びた。

20年近く前、あなたが親知らずを抜いた時、

パンパンになった顔を大爆笑してしまったことを。

今ならあなたの気持ち、よくわかる。

歴史的な雪解けの瞬間だ。

 

 

 

抜歯十五日目。

痛みは時折、波がやってきては、引く。

次の診察は一週間後。

しかしこの痛みのまま過ごすのは怖い。

 


いい加減、痛みを忘れたい。

夫や親に心配かけたくない。

子供と外で、全力で遊びたい。

素焼きナッツや、牛タンを思う存分食べたい。

 


病院に電話をかけ、

翌日に診てもらえるように予約をした。

 


親不知は、英語では、

wisdom tooth

と言うそうだ。

物事の分別がつく年頃になってから生えてくる歯であることに由来する。

 


これまで、私自身のwisdomは、歯の成長に追いついてなかったのだ。

ようやく、ようやく私は、

この一見から学び、分別がついたのだ。

痛いと思ったらすぐ病院に頼る!無理しない!

それが、私と家族の幸せに繋がる!!

 


抜歯十六日目。

今回は、タンタンメン先生の診察であった。

まずは、歯茎のガーゼを取り替えるという。

 


ひょっこりガーゼが久しぶりに外された。

歯茎に穴がぽっかりあいている。不思議な感じだ。

傷口は、徐々に良くなっているという。


そしてまたガーゼを詰める。

ああ、怖い。

痛みを知ってしまうと、再体験は本当に怖いものだ。

恋愛と同じ。

 


しかし、今回は、治ってきているせいなのか、

前回よりは、痛くなかった。

 


しかも、タンタンメン先生、

ガーゼの詰め方がとても丁寧でしっかりしてらっしゃる。

前回の端っこピロピロ感がない!ひょっこりはんがいない!

これは大変重要なことなのだ!

 


頬骨、耳、頭の痛みについても聞いた。

 


抜歯の際、骨も削っていて、

筋肉は骨に繋がっているため、影響が出てしばらくは痛みが続くとのこと。

痛み止めを飲みながら、時間が経って良くなってくるのを待つしかないと言う。

 


時の流れに身を任せー…

私、待ーつーわー…

がっかり気味に、テレサテンとあみんが、私の中を流れる。

 


いつ、どうやったら、この一件は終息するんだろう。

気づいたら、夏はもう後半で、トンボが飛んでいる。

 


しかし、一度診てもらったおかげで、心が少し軽くなった。

素焼きナッツも、ゆっくりなら食べられるようになった。

 

続く。

ママの親知らず抜歯 第2章 抜歯八日目〜十一日目

抜歯八日目。

お嬢は、熱が下がり、見事に復活した。

坊やも下痢ではなくなっていた。

私も痛み止めを飲めば、活動できる。

もうこれは旅行に行くしかない。

 


歯痛と流血の母、

病み上がりお嬢、

下痢上がり坊や、

唯一無傷の父、

インクレディブル ファミリーだ。

 


痛み止めの眠気が怖いので、

運転は夫に任せ、日本海方面へ。

 


実は、2年前に車を持ってから、

私は、一度たりとも夫の運転で寝たことがなかった。

夫はペーパードライバー歴が長かったので、申し訳ないが、心のどこかで信用しておらず、

完璧かつウザい助手として、眼を光らせていた。

 


しかし、なんと、

この旅で、私は初めて彼の傍らですやすやと眠りについた。

痛み止めの効果たるや。

あまりに自分でも驚いたので、

彼にそのまま事実を伝えてしまう失礼さたるや。

歯と一緒に、気遣いの神経まで抜けてしまったようだ。

 

抜歯九日目。

旅行の醍醐味は食事である。

食事のタイミングで痛くないよう、

しっかり逆算し、痛み止めを飲んで臨んだ。

抜歯後、柔らかいものばかり食べていたが、

名物の刺身や牛肉は、使える右側の歯を駆使し、なんとしてでも食べた。

美味しさは、痛みを上回るのだ!

 


なんかいい感じに逆境乗り越えてます的な書き方だが、

もうここまで痛みが長引いているので、

ダメな人のパターンである。

 


抜歯十日目、

痛みは、徐々に徐々に、

牛歩の歩みで和らいでいた。

しかし、

左側の歯が全体的に染みるような感覚になったり、

左耳の近くが痛くなったりする時があった。

 


旅の帰路、高速道路で、必ず見ておきたい場所があった。

 


新潟県の「親不知(おやしらず)」。

 


親知らずを抜いた私が、

親不知を通る!

なんて事は、

親知らず!

(本当は知ってます。)

 


親不知は、

昔、親も知らないうちに子も流され引き離される、

交通の難所だったとのこと。

たしかに、キレイな海だが、崖っぷち。

 


私の親知らずも、難所だったから、

痛みが長引いたのだろうか。

この痛みは抜歯で避けられない通り道なのかもしれない。

そう、この崖を通らなければ目的地にたどり着けなかった昔の人と同じように…!

 


親不知にシンパシーを感じながら、

無事に旅を終えた。

翌日の抜糸を待つばかりである。

 


抜歯十一日目

やっと、正々堂々と病院に行ける日になった。

 


今日は、タンタンメン先生の不在。

日に焼けて頼り甲斐のありそうな、

山下真司を思い出す先生だった。

 


「痛みはどうですかねー?」

 


もうなんか色々痛いです。

正直にそう伝えた。

 


抜糸は一瞬チクっとするが、そこまで痛くなかった。

 


山下真司風の先生、

「下の歯、傷の治りが良くないねー。」

 


え、そうなの。

いや、やっぱり。

認めずにいたが、

もしや、ドライソケットってやつ?

 


すると、

「ちょっと、処置するねー。ガーゼお願い~」

 


あっという間に麻酔が打たれた。

痛い!

 


なんか消毒的な何かをされた。

マズイ!痛い!!

 


看護師さんが運んできたガーゼ、

なんか私の傷口にグイグイってしてない!?

痛い痛い痛い…!!!

 


今回の親知らず抜歯で、

見事に、

ベスト・オブ・痛みを受賞する処置。

おめでとう!!

 


起き上がった診察台の上で、

ハンカチで口を押さえ、しばらく固まった。

 


先生、

「このガーゼに軟膏塗ってあるから、

このままにしておいて、10日後にまた来てね。」

 


え?

ガーゼが歯茎の穴に入っている?

しかも、そのまま10日も生活する?

 


カルチャーショックだ。

目からウロコ。

歯茎からガーゼ。

 


どんな大きさのガーゼか知らないが、

私の歯茎の収納力、ハンパない。

我が家の押入れも見習ってほしい。

 


先生、

「この一週間、ちょっと抵抗力弱ったりしてたかなー」

 


思い当たる節があった。

夜泣き対応の睡眠不足。

そして、生理直前。

 


生理前は、ちゃんと考えれば、避けられたタイミングかもしれない。

 


「そんな痛かったら、無理せず、

土日でも盆休みでも、いてーって言って駆け込んでいいんだよ!」

 


何その、試合に負けたイソップを労うかのような山下真司感!

ここは、ラグビー場なの?スクールウォーズなの!?

 


休みの日に駆け込んで、トライしていたら、

もっと治りはよかったのだろうか…

 


そもそも、迷う性格なんだから、

休み前は、避けるべきタイミングだったのかもしれない。

 


這々の体で、なんとか運転して自宅に戻った。

痛みのせいなのか、顔色が真っ青だ。

痛み止めを飲んで、パッタリと寝込んでしまった。

 


こうして、ガーゼが私の左歯茎に住みついた生活がスタートする。

 

続く。

 

ママの親知らず抜歯 第2章 抜歯四日目〜七日目

抜歯四日目。

顔の腫れは引いてきたが、

痛みがなかなか引かない。

 


前回、もうこれくらいで痛くなかったのに、おかしい。

 


「親知らず  抜歯後  痛み  いつまで」

この日から、毎晩、ネット検索の鬼になった。

 


「抜くのに時間がかかったら、痛みも長い」

だとか

「傷口が塞がらないドライソケットの症状に気をつけて!」

だとか

色々記事が出てきた。

私の正解はどれなのか。

 


ドライソケットとやらは、起こる確率が低いようだから、違うだろう。

抜歯に時間かかったから、これくらい、普通の痛みかもしれない。

 


…と楽天家を心に住まわせ、我慢した。

しかし、その日から夫が出張のため、

子供達を一人でみるのは不安になり、実家に身を寄せた。

 


抜歯五日目。

この日が痛みのピークであった。

痛くて夜もよく眠れない。

病院からもらった薬は終わった。

親が、病院に行った方が良いのではないかと心配してくれる。

 


親知らずなのに、

こんなに親に知らせて、頼って、

心配させるなんて、

私の親知らずは、名前負けし過ぎている。

 


病院に行こうかな…

いや、

この痛みの先に、きっと回復があるんだ!

400メートル走も、ラスト100メートルが一番つらいもんだし!

そんな陣痛ほど痛いわけじゃないし!

今日は、土曜で祝日だから、私なんぞのことで、緊急外来でいくのは申し訳ないし!

 


はい、出た。

我慢強い自分嫌いじゃないやつ!

なんでもスポーツを例えにするやつ!

なんでも痛みを陣痛と比較するやつ!

緊急外来を受診して大したことなかったら気まずいと怖気ずくやつ!!

 


これは、最大の判断ミスだったと後から気づく。

 


市販の痛み止め薬を買ったが、

6時間おきに飲むのがルールなので、

4時間で痛みが出てくるが、残り2時間痛みと戦ったり誤魔化したりして過ごす。

 


大して食事も取る気になれない。 

子供の相手も満足にしてやれない。

夏祭りは、おじいちゃんと行ってもらい、

映画は、またの週末にいこうと約束した。

まったく情け無い。

 


抜歯六日目。

前日より、痛みがマシになってきた。

痛み止めは必須で、夜は痛みが来ると起きるが、顔の腫れは引いた。

 


やはり、果報は寝て待て。痛みは寝て直せだ!

これなら、明後日からの旅行中によくなるかもしれない。

夫も出張から帰ってきて、人手も足りて、子供も喜んでいる。

よかったよかったー!

また謎の楽天家が、私の中を占拠した。

 

抜歯七日目。

平日。

病院に行くなら、この日がラストチャンスだった。

この翌日から、私達は二泊三日の旅行だ。

病院もちょうどお盆休みに入る。

念のため病院に痛いと連絡してみようか…と考えていた矢先である。

 


お嬢、37.5度の発熱。

 


数年ぽっちの子育て経験値で、観察しまくる限り、

小児科に行かなくても、これ以上、熱は高くならず、

明朝には元気になるパターンだと感じた。

しかし、看病は必要である。

水分と栄養をこの子に!

 


旅行は無理なら諦めよう。

しかし、行けた時の場合に備え、荷造りも必要である。

パンツとシャツをカバンに!

 


そこに、ダークホース襲来。

坊や、下痢。

 


…これぞ、ゲリラ豪雨…!

 


しかし、とても元気だ。

熱もないし、食べまくっている。

むしろ色々食べすぎが問題なんじゃないか。

冷たい物を彼から遠ざけるのよ!!

 


そこに、更なる刺客登場。

私、生理になる。

 


そういえばこの抜歯騒ぎで忘れていたが、予定通りすぎる!

お前はやっぱり真面目か!

カレンダーアプリ通りなのか!

 


子育て中あるあるの、マルチタスクモードONになり、

歯の病院のことがすっかり頭から抜け、

痛みは薬を飲んでうやむやと気づかないフリをした。

 


健康を保つ最後の砦、夫は、冷静に呟く。

「この状況で行く意味はあるんだろうか…」

 


わからない、意味はわからない。

とりあえず、夜明けを待つのみよ。

 

続く。

ママの親知らず抜歯 第2章 抜歯当日〜三日目

前回から一年後、左上下の親知らずを抜いた。


まず、この抜歯で学んだことは、

「子育て中の抜歯は、周りのサポートをもらうことが必須!」

「抜歯のベストタイミングを見極めよ!それでも子育て中は不測事態が起こるけど!」

「処方された薬を飲み終えても痛かったら、即病院へ!」

 

第1章から引き続き、反面教師としてご覧ください。


律儀な私は、前回の抜歯後、カレンダーアプリの一年後の週に、

「親知らず抜歯 予約する」

と入力していた。真面目か。

アプリは忘れずに、一年後の私に、通知をする。お前も真面目か。

 


第二子の坊やの卒乳は、すでに完了しており、

もう「痛み止めが飲める」の条件は満たしていた。

気は進まないわ、しらばっくれたいわだが、

応募条件クリアな上に、

左側のみに親知らずがいるアシンメトリー感がもう気持ち悪い。真面目なんだよもう。

自分を鼓舞しまくり、病院に予約の電話をかけた。

 


長女のお嬢は、一週間の保育園夏休みがある。今回はその直前に、抜歯をすることにした。

夏休み前半は大きな予定もない。

その間に顔の腫れが戻り、

後半の旅行に臨めるだろう。

タイミングに抜かりなし!と思っていた。

 


実際には、バッドタイミングであったことに、後になって気がつくのだ。

 

 

 

抜歯当日。

病院ではトントンと話も早く、診察台に座った。

先生は、前回とは違う人で、丁寧で淡々とした男性。タンタンメン先生と名付けた。

 


目の前の壁に、写真付きカレンダーがかけてある。

近所の有名な花火大会の、昨年の様子だ。

実はこの抜歯の日が、今年の花火大会だった。

 


抜歯後、大丈夫だったら、

大人しくしつつ外に出て花火を見よう!

と思いながら、診察台が倒れていく。

まずは、左下からである。

 


麻酔されてーゴリゴリされてーガリガリされてー引っ張られてー

しんどいけどそろそろ抜けるんだよなー

 


…と思っていたが、15分経ってもまだ抜けない。長い。

 


タンタンメン先生、

「はーい、ゴメンなさいー頑張ってくださいー疲れますよねー大丈夫ですかー?」

 


いえ、先生、

もう口を開けているのが辛い。

緊張で、身体に力が入って辛い。

背中とお尻が汗だくで辛い。

痛かったら左手あげてって言うが、

これはあげてもいいレベルの辛さなのか?

痛いのか?痛くないのか?どっちなんだい??

悶々考えいたら、腹の上に重ねていた両手の指を、

ウネウネウネウネ動かしていた。

セクシーに「カモ~ン」とする感じの動きである。

助手の看護師さん、さっと私の手を握り、

「大丈夫!?辛いよね?!」と励ましてくれる。

無意識の恥。私のカモンにすかさず来てくれてありがとうございます…

 


30分程経つ頃、

あ、なんかちょっと痛いかも?!これは満を持して手をあげてやる!

…と思った瞬間、

 


「はい、抜けましたよー」

 


やっと親知らずが粉々になって抜けた。左手は上げ損ねた。

 


しかし、つらい、、、

前回より強者の悪党が残っていたのか、、、

まだもう一本抜くなんて、、、

 


しばし、うがいのレストを挟みながら、

花火の写真に一瞥し、

…今日はもう見られないかもしれない…

と思った。

 


そしてすぐに上の抜歯スタート。

また長時間を覚悟したが、

10分もかからずに抜けた。

拍子も抜けた。

 


長丁場で精神的ダメージはあるが、

これですべての残党を退治したのだ。

なんとも清々しい!!

 


今は麻酔で痛みはない。

痛くなっても、今回は痛み止めを躊躇なく飲める。

飲みまくってやる!(※ダメです。正しく飲みましょう。)

もう数日後にはスッキリ生活だ!!

 


車で家に帰り、薬を飲み、おかゆを食べ、

しばらく休憩すると、

やっと、花火も見られる気力になってきた。

 


川辺の花火は、それはそれは美しく、華やかで、

戦から帰った私には、例年以上に感動的な景色だった。

 


ああ、ちょっと痛いけど、

私の夏は、始まったんだ。

ヒューーッ、ドドーン!パラパラパラ~

 


そんないい気分で、麻酔が切れる夜を迎えた。

 


痛いもんは痛い。

なかなか眠れない。

顔が痛くて横になりにくい。

痛み止めを飲んでもそんなもんなのか…

 


前回、最小限の痛み止めしか飲まなかった自分の無謀さを再認識した。

 

 

 

抜歯二日目。

よく眠れないまま、

傷口チェックに病院に行った。

経過は良好である。

 


先生、

「抜歯は、お盆休み入っちゃうんで、9日後でいいですか?」

 


盲点、お盆休み…!

まぁ経過がいいなら、問題ない。

 


診察後は、昼寝をし、

顔にマスクで、保育園にお迎えに行ったり、

公園で子供を見守ったりして過ごした。

薬を飲めば、痛みは大丈夫。

今夜こそは、しっかり寝よう。

 


しかし。

 


ヴァー!!ウッギャーー!!

 


突如、坊やの夜泣きが始まった。

普段、寝つきも良く、滅多に夜泣きすることもないのに、

なぜ、なぜ、なぜ今宵なのか!!!!

 


手を替え品を替え、場所を替え床を替え、

あやせどあやせど、泣き止まない。

 


やっと眠りについたと思ったら、

ウッギャーー!!

第二ラウンド…チーン。

 


これに加え、坊やは、

眠い時に、横になると、

私の襟ぐりをひっ掴み、腕をぐいぐい入れ、胸を触りたがる。

子供でなかったら、えらい事だ。

 


顔をうっかり殴られたら困ると思い、

腕を、志村けんの「あいーん」の形にし、

自分の顎全体を覆って避けた。

しかし、坊やは、腕を強引に押しのけ、

なんとか襟ぐりに手を突っ込もうと、体当たりしてくる。

 


バカ殿様ー!おやめくださいーー!

 


抱っこしている時は、

私の顔をめがけ、

スナップきかせて、手や頭を当てに来る。

眠ったとしても、寝相が激しいので、

足がどの角度から降って来るかわからない。

 


顔はやめな!ボディにしな!

金八時代の三原じゅん子のセリフを、坊やに捧げ続けた。

 


卒乳したら、抜歯してももう大丈夫と思っていたが、

一歳の坊やには、私の歯なんぞ関係ない。

かわいい我が子だから、仕方ない。

親知らずと言う名の、子知らずだ。

 

 

 

抜歯三日目。

朦朧としたまま、朝になった。

 


この日は夫が休みだったので、

全てを任せ、私は休養をした。

痛み止めは、3~4時間で効果が切れるが、頓服薬を飲めば大丈夫だった。

 


顔の腫れは、この時、MAXだった。

前回の腫れよりもひどい。

今回は、カバオくんではなく、宍戸錠だ。

左半顔・宍戸錠、現る。

 


トイレで鏡をみる度、

私の家族は、よく笑わずに、この顔と普通に喋ってくれるなぁ…

と感謝した。

 

続く。

ママの親知らず抜歯 第1章

私は、三回、親知らずの抜歯をしたことがある。

一回目は、独身時代に、右上。

二回目は、第二子の出産後、右下。

三回目は、前回からちょうど一年後、左の上下。


二・三回目が、子供がいる状況で、

色々勃発するわ、反省点が多いわ、てんてこ舞いだった。

その時の状況をブログに書いてご紹介する。

ダメな例としてご覧頂きたい。


まず、言いたい。

授乳期間中、急ぎでないなら、抜歯はしない方がよい!!


今から一年前の夏、

お嬢こと長女と一緒に、検診に行った歯医者で、久々にレントゲン撮影をした。


「お母さん、親知らず、横向きに生えちゃってるから、これ早めに抜いた方がいいよ~

特に右下ね。

隣の歯に影響出てる感じだからね~どうするー?

やるなら大きい病院、紹介するよー」

気さくな先生にサクサクっと言われる。


ほんとだ、歯茎の中の親知らず達、

寝転びながら、横の歯を頭突き状態。


10年程前に抜歯した、右上の親知らずは、

まっすぐ生えていたのだが、

残る三人衆、そっち方向に戦いを挑んでおったか。


お嬢が生まれてから、

「オラ、子供の歯を守る!移すまじムシ歯菌!!」

と私には熱い責任感が宿っていた。

歯医者に通っている期間は、更にその意識が高い。

前回の抜歯がそんなに大変だった記憶もなく、

また、育休中なので、顔が腫れても何とかやり過ごせると思った。


抜きます!潜む残党、引っこ抜いてやりましょう!!

私は、力強く即答。


「おー頑張れ~!」

サクサクっと先生が書いた、大病院への紹介状を手に入れた。


しかしこの時点で、自分が前回と違う状況に置かれていることに気づいていなかった。

抜歯直前、診察台の上で苦悩することになる。

 


一週間後、

紹介された病院の歯科口腔外科へ、鼻息荒く残党退治に向かった。


そこで、問診表を見て、優しげな先生が心配そうに私に問う。


「授乳中ですと、強い痛み止めの薬を出せないので、

抜歯後、ツライかもしれないですよ。

今回、抜歯しても大丈夫ですかね?」


え…?

そうなの…??

それ、早く言ってよ…???


そうなのである。

私には当時生後4ヶ月の、第二子の坊やがいる。

昼夜、彼のために稼働するおっぱいを携えていた。

検診に歯医者へ行く時は、坊やを預けていたので、

サクサク先生、私が授乳中とは知らなかったのである。

しかし、何より、私の無知が問題であった。

痛み止めを飲んだ経験がほとんどなかったのだ。


今痛い訳ではないから、慌てて抜歯する必要はない。

しかし、

車で30分かけて病院に来ている。

坊やも親に預けている。

かなり覚悟もしている。

康介さんを、手ぶらで帰らせる訳にいかねぇぞ。

残党退治が、かのロンドンオリンピック競泳になってきた。


右下の一本だけ、抜きます!

薬は弱くても大丈夫です!

頑張ります!!


もう引き下がれない。

診察台の背もたれが倒れて行く。


部分麻酔後、

ゴリゴリ、ガリガリされながら、

15分程で裁断された親知らずが抜けた。


麻酔が効いてるので、違和感はあるが、そこまで痛みはない。


ひとまずは一番悪さしそうな奴を抜いてやった!

手ぶらではない、袋に入った粉々の親知らずがお土産だ!

 


薬局で処方された薬は、

①一日三回、食後に飲む、痛み止め・抗生剤

②痛いときに飲む頓服薬


①は、授乳中でも飲める。

ただし、痛み止めの効果は弱いらしい。

②は、成分が母乳を通じて、子供に影響が出る可能性があるとのこと。飲む場合は、授乳はできない。

うちの坊やは

「オレ、これだけでいいんすよ」と言わんばかりに母乳しか受け付けないので、授乳は必須。

ムシ歯や口内の病気を移すまいと、抜歯しているのに、

もっと良くない物を手渡し、いや、乳渡ししてどうする。

これは飲むもんか!

母性が痛みに強く立ち向かわせていた。


食事は、柔らかく流動的な物を、ゆっくり反対側の歯で食べた。

授乳中なので、食べることには、並々ならぬ意欲がある。


あれ、何とかなるかも?と思っていたが、甘すぎた。

麻酔が切れてからが、本当の勝負だった。


夜は痛みパラダイス!

地獄とは言いたくない、抜きたくて抜いたのだもの!

陣痛を思えばなんのその!


ガンガンギンギン!押し寄せる痛み!

ウギャーフギャー!乳を求める坊や!

身体を横にすると、重力がアゴにかかって痛い。

添い乳もポジションが定まらない。

ウトウトすると、痛みが現れる。そこに坊やカットイン!


陣痛を…思えば…うっっ…

一度決めたら引き下がれない自分を、強がりな自分を、うらめしく思った。

この痛みで何か命が出てくるわけでもない。

なんで私は、痛み止めが飲めないタイミングで抜歯しちゃったんだ。


苦悶しながら、パラダイスを堪能し、朝を迎えた。

 


抜歯から二日目。

少し顔は腫れている。

満身創痍で、傷口確認のために、病院に行ったが、問題はないとのこと。

抜糸は六日後だ。

親や夫に、家事や子供の対応はお願いして、

安静にして過ごした。

無謀な娘・妻・母に、なんて優しさ。身に染みます。傷に染みます。


抜歯から三日目。

この日が腫れのMAXであった。

鏡の前に、右半分カバオ君※が現れた。

自分のメタモルフォーゼに、思わず爆笑。

したいが、口が開かないからニヒルにしか笑えない。

※カバオ君…アンパンマンの食いしん坊キャラ。


幸いにも治りは良く、

薬を飲んでいれば痛くはなかった。

真夏で猛烈に熱いが、マスクを装着し、お嬢の保育園迎えにも行けた。


その後、経過は良好で、

抜糸の日までには痛みも腫れもなくなっていた。

 


1ヶ月後、

最後の傷口チェックも難なくクリアした。


その時、先生が、優しく問う。

「残ってる左の二本は…しばらく時間あけましょうかね?」


はい!坊やがおっぱい卒業したらでいいです!!

何ヶ月後かわかんないけど、ガンガン薬飲めるようになった時に何卒!!

次回、初診料払うことになっても全然いいです!!


こうして、今回の抜歯は終わった。

 


抜歯は、乳飲み子を抱えた状態でするもんじゃないと、深く深く反省した。

痛い目にあわなきゃわからない、

怖いもの知らずの謎のチャレンジ精神、

どうにかしてほしい。


まだ二本の親知らずが、左の上下に残っていると思うと、顔半分が重い。

まだ抜いてないのに、すでにカバオ君に取り憑かれた気持ちだ。


できるだけ、坊やの卒乳をギリギリまで引っ張りつつ、

今回の反省を活かし、痛み止め薬が飲める状態で挑もうと心に誓った。

 


しかし、次回の抜歯は、

ベストタイミングを考えて臨んだのに、

予想を超える苦しみに見舞われることになる。

一年後の様子を書いた、第2章へ続く。

 

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昨年と今年、親知らずを抜いた。

もうドラマティックすぎて、

この話を誰かにしたい!

だけどなかなかできない!

ひとまずメモっとこう!

と、自分の中で貯めていたものを、

やっとまとめた。

どなたかの目に止まれば、これ幸い。

 

親知らず以外のことも、ぼちぼちと書いて行こうと思う。